
平成28年熊本地震は、震度7が連続して発生する未曾有の震災であった。本講演では、この震災で生じた宅地地盤災害とその復旧・復興について、行政対応および地盤品質判定士の活動からの視点で解説する。まず、熊本地震における宅地被害の特徴として、1)空石積や増し積み等の既存不適格擁壁の崩壊、2)「阿蘇-4」に代表される火山灰質地盤(特殊土)による揺れの増幅や地盤変形、3)地表地震断層や阿蘇地方でみられた地盤の陥没・地割れ、4)大規模盛土の滑動崩落や液状化による不同沈下といった多様かつ甚大な被災形態を紹介する。次に、これらの被害に対する行政の復旧・復興支援策を取り上げる。具体には、補助対象の拡充や要件緩和を図った「宅地耐震化推進事業」と、公共事業の対象外となる小規模宅地等を隙間なく支援した「震災復興基金」の事例を紹介するとともに、現場における復旧判断の指針となった「被災宅地災害復旧技術マニュアル」の活用事例や課題を解説する。
さらに、こうした復旧・復興プロセスにおいて、地盤品質判定士が果たした役割や、宅地所有者が抱いた不安・道義的苦悩(二次災害への懸念など)を整理して提示する。そして、平成28年の教訓を経て、再び熊本地方を最大震度7が襲った「令和8年熊本地震」を取り上げる。この最新の震災における宅地地盤被害の特徴や、講演者が宅地被災者として直面したリアルな体験を踏まえ、過去の対策の検証と、これからの宅地防災・技術者に求められる役割を提起する。