熊本大学大学院 先端科学研究部 准教授 才ノ木 敦士氏
大深度(地下1000 m以深)におけるトンネル掘削プロジェクトが,日本を含め世界各国で進められています。そのような大深度における掘削において,トンネル周囲に作用する応力が岩盤強度に達した場合,従来の支保システムの許容量を超える変形が生じ,支保部材が破断してしまうケースが多く存在します。このような場合に対処するため,近年,岩盤の大変形に対応しながら岩盤に抵抗力を付与できるタイプの変位制御型支保部材が開発されています。本日は,変位制御型支保システムの一つである,変位制御型ロックボルトの変位制御機構ならびに大変形地山への適用性について講演させて頂きます。特に,浅い深度に弱い岩盤(例えば蛇紋岩)が存在するケースや,大深度にき裂が卓越した火成岩(花崗岩)が存在する場合を想定し,変位制御型ロックボルトと従来のロックボルトのパフォーマンスを比較し,変位制御型ロックボルトの変位追従性能・制御能力を明らかにします。また,将来的な実用化に向け,施工における最適化手法についても議論します。本日の講演内容は,安全,安定した大深度地下開発を実現するための重要な要素の一つになると考えています。