
近年は線状降水帯の発生に伴う、局地的豪雨が頻発し、それに伴う内水氾濫、河川の越水などにより、幹線道路、生活道路が冠水する事例が多発している。
冠水した道路では、用水路や側溝、蓋が外れたマンホールなどと道路の区分が分からず、徒歩避難中に増水した用水路などへの転落、車両ごとの水没など、溺水としての「水難」事故が後を絶たない。
青少年、児童、高齢者や障害者、殊に発達障害等の特性を含めて、水難事故に関する詳細な国のデータは整備されておらず、現在、(一社)水難学会が全国的な事故調査を進めている。離岸流の発生個所や水難現場における深浅測量などの現地調査もあわせて行い、地理的特性に加え、事故に遭いやすい対象(人的特性)や人工構造物の状況、社会的条件(社会的属性)についても分析が進みつつある。
本講演では、こうした調査から見えてきた「弱者」の視点――高齢者や子ども、そして徘徊や危険認知の難しさを抱える発達障害児等――から水難事故の背景要因を読み解く。
あわせて、転落しても自力で這い上がれる防災型ブロックマットなど、水辺のインフラ整備に伴う工学的対策の実証事例や、万が一、流されたら「浮いて救助を待つ」といった、水難学の知見に基づく具体的な生還手段も紹介する。
保健医療職は、災害弱者と成り得る当事者一人ひとりの身体的・認知的特性を理解しつつ、個別避難計画の作成や地域との「顔の見える関係」づくりを通じて、ハード整備だけでは埋まらない隙間をソフトに補う役割を担いうる。
ハードたる工学に、歴史・保健医療のソフトな知を組み合わせた「総合知」としての水難対策のあり方を、インフラ整備・防災技術に携わる皆様とご一緒に考えたい。
熊本保健科学大学のブース出展では、「多様な避難のあり方についての教育研究」について他出展者との協働研究の成果も報告する予定です。
聴講に併せ、ブースにも是非お立ち寄りください。